2024年01月13日

真っ直ぐ進め

父親が死んで十数年たった。
真っ当な会話を思い出せないくらい、
はっきりいって無機質な父娘関係だったなと思う。

子供の頃は同じ屋根の下で暮らしていたのだから
「おはよう」とか「ただいま」くらいの会話はあった。
が、何しろ「喋らない父親」と「父親が苦手な娘」、
……暖かな親子団欒とはまったく言い難い。

これには実は母親も関係していて、
例えば私が父に「お父さんは〇〇が好きなの?」
と聞くと、母が「お父さんは△△の方が好きよ」
と代わりに答えるという……
そんなちょっと歪なところが我が家にはあったのだ。

喋らないだけで別に虐待されていたわけではないし、
希望した私立校へも進学させてくれた。
ただ父子でどこかに出かけた思い出とかもなく、
クリスマスも誕生日プレゼントも母から貰った。
結婚した後は事情があって関りを避けた。
結局、最後の最後まで関係は希薄なままだった。

でも何故か一度だけーーーー
成人してから二輪免許をとって実家に戻ると、
父が農機具小屋の隅からか古いバイクを引っ張り
だしてきて、私に「これをお前にやる」と言う。
正直、かなり面食らった。
私が父から直接物を貰ったのはその一度切りである。
その時、父は私にこう言ったのだ。

「真っ直ぐ進め。
そうすれば必ずどこかに辿り着くから。」


いったい何を思って父親がそんなことを言ったのか、
もう今となっては聞くことも叶わない。
しかしこの言葉は父親と縁遠かった娘の、
人生の指針として今なお残り続けている。

※角刈り様へ<続きより返信ありです(*´ω`*)
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posted by にょん at 05:23| Comment(0) | 日々雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする