2024年06月16日

「イグアナの娘」の話

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萩尾望都 イグアナの娘 1992年
https://www.youtube.com/watch?v=P-PFbo_Jg8w
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youtubeの「スーの好き好き漫画」チャンネルより。

オモ―様(萩尾先生のこと)は長編は勿論ですが、

実は中編・短編のストーリーテリングが素晴らしく

上手い漫画家さんなんですよね。

戦中・戦後の女性の人生を僅か24Pで描ききった

「グレンスミスの日記」とか、少女が亡き母親を偲んで

浴衣を縫う16Pの「小夜の縫うゆかた」とか。

まるで一本の映画を観たような満足感で、

こういう心の奥底まで情緒で満たされる物語が、

日本漫画の真骨頂だと思います。

「イグアナの娘」は当時、姉妹格差で悩んでいた

自分にはまさにドンピシャな作品でした。

テストの点数の話、わかるわかる!

同じような点数なのに姉妹は褒められて、

自分は「努力が足りない」と言われてしまうとか。

服の色の話は男性にはちょっと理解しにくいかも

だけど、親が勝手に似合う色を決めちゃうのよね。

好きな色さえ選ばせてもらえない理不尽さ。

姉妹には「色が白いからこの色が似あうね」、

自分には「こっちの方が地黒が目立たないよ」。

子供は無意識な差別にとても傷ついてしまう。

親、特に母親に愛されないのは辛いよね。

子供はどうやっても期待してしまうものだから。

ところがですね。

大人になったらこの母親の気持ちもわかるんです。

見たくない自分と似たものが目の前に居続けるのも

キツイよねって、わかってしまうのもこれまた辛い。

リカは母親の死でそれを浄化するのだけど、

母親の方はどうだったのだろう?

孫が生まれても、やっぱり娘はイグアナだったのか。

晩年の母親の言動は一切描かれていませんが、

母娘は離れてようやく平穏に暮らせたのですね。

この微妙な愛憎関係を描ける作家さんは少ない。

そしてラストで描かれる驚愕の母親の姿……

今読んでも胸が締め付けられる作品です。


posted by にょん at 06:52| Comment(0) | 日本文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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